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例)研究発表 生命科学科
[2017/01/30]
人工多能性幹細胞(iPS細胞)によるキタシロサイの繁殖計画【ヒトゲノム幹細胞医学分野 林克彦教授】
  絶滅危惧種に指定されているキタシロサイの卵子を人工多能性幹細胞(iPS細胞)から作成、近縁のミナミシロサイを代理母とし将来の個体数増加を目指す研究を、ヒトゲノム幹細胞医学分野 林克彦教授がドイツの研究チームと始めました。この取り組みについては各メディアにも取り上げられ関心を集めています。

  この度、本研究について林教授にお話を伺いました。
1. このプロジェクトが立ち上がった経緯
 
  キタシロサイは、角を狙った乱獲が原因で数が激減し、現在わずか3頭の生息を確認するのみとなり、国際自然保護連合(IUCN)の絶滅危惧種に指定されています。
  
  2015年12月、アメリカのサンディエゴ動物園とドイツのライプニッツ野生動物研究所が主催し、キタシロサイの繁殖計画を話し合う場が設けられました。生存する3頭はいずれも高齢であり自然繁殖は不可能であるため、あらゆるテクノロジーから個体数増加の可能性を探ろうと各分野より専門家が集められました。私は多能性幹細胞から精子および卵子を作製する幹細胞医学の分野で参加しました。そこの場で人工多能性幹細胞(iPS細胞)によるキタシロサイの繁殖について具体的な計画がなされ、今回のプロジェクトが立ち上がりました。
  国際的なコンソーシアムが設置されていたこと、2011年にiPS細胞によるキタシロサイの細胞の作成に成功していたこと、何より現状のままではキタシロサイの絶滅は必至であり非常に差し迫った問題であったこと、この3つがプロジェクトが発足した大きな要因です。
2. プロジェクトの組織
  大きくはアメリカ、ドイツ、日本、イタリア、チェコ、オーストリア、オーストラリアの七カ国の研究者がこのプロジェクトに参加しています。私が参加する幹細胞医学からのアプローチはアメリカ、日本、ドイツの研究者で行っており、私はドイツのグループと共に研究を進めています。

3. プロジェクトのサポート体制について
  2015年にプロジェクトは開始したばかりで、これから日本国内での研究支援体制を含め、準備を行っている段階です。アメリカ、ドイツでは支援体制もある程度整っています。

4. 今後の進展について
  キタシロサイの精子は凍結保存されていますが、生存する雌は高齢のため、その卵子を使用しての繁殖は不可能です。生殖可能である卵子が必要であり、プロジェクトの第一段階は、iPS細胞から始原生殖細胞を作製することです。これはマウスなどの実験の結果を踏まえ、比較的見通しが立っているのですが、その後の卵子の作製や、受精させた後に、代理母の子宮内で育てていく過程が難しいものになるだろうと思われます。近縁のミナミシロサイが代理母の候補となっていますが、サイの誕生までの過程は不明な点が多く、現在ドイツの研究者が研究を行っています。ミナミシロサイの受精卵を胎内に戻し、その後の出産までの過程を解明するのですが、どの培養液が適しているかなどの調査から始めなければならない状況です。妊娠期間も16ヶ月と期間を要するため長期的なプロジェクトになると思われます。

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